◆とある過去の日◆





「ちょっと!二人とも こんなところで遊んでたのね!
 ノアが探しているわよ!」


「ワヨ!」


まぶしい青空の下、赤いオウムを肩にのせて、
大きなとんがり帽子を被った一人の少女が丘を登ってくる。

そして少女の高い音階の声を オウムが楽しそうに真似をする。




「遊んでなんかないさ!ウネ。ドーガと真剣勝負だ!」


丘の上、中央に鎮座する木の下から非難めいた声があがる。

声の主は、少し長めの金の髪を後ろで束ねた少年。
腰に両手をあてて むすっとして近づいてくる少女をにらむ。


「すまない、ウネ。ザンデと先日習った魔法を試していたんだ。」

金の髪の少年の横で、彼より少しばかり長身の黒髪の少年が
二人をなだめるように声をだした。


「まぁ、ドーガがそういうなら そうなのね。」


「ちっ なんだよ そりゃ。贔屓だ。」


「ねぇ ザンデ。 ・・・オオカミがくるぞーって話、知ってる?」


苦笑しながら少女が ザンデ、と呼ばれた少年に視線を投げる。
それに困惑したようにザンデが応答した。



「・・・オオカミがくるのか?」


「・・・・」


一瞬の時をはさみ、一人の少年を除いた
男性と女性の笑い声が 空に響いた。


「な、なんだよ・・一体。」


「・・・いや、なんでもない。さ、ノアが呼んでいるんだろう。
さ、怒らせないうちにいこう。」


ドーガが二人の肩を優しく叩くと、丘をゆっくりと下っていった。


「まってよ、ドーガ。」

「まて、勝負はどうなったんだよ!」

その後をばたばたと二人の少年少女が追いかけていく。



静寂を取り戻した丘の上では、

彼らの背中を見守りながら
風が優しく穏やかに、草木をかすめていった。






それは
とある 過去の日常の一片。




end








※昔は仲が良かったんじゃないかなと思い偲ばれる3人の勝手な妄想話です。
なんかちょっと切ない感じで。
それも・・なんですかね
本当にちょみっとだ(苦笑)