闇の戦士 デュアルヘッドドラゴンさんです・・。
ケルちゃんと同じようにこちらも武器を双頭の竜をあしらってみました。




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夜の来訪を歌う 黒い鳥の魔歌の下。

 堕ちる日の光りに照らされた 森の中 ざっと音か響いた。


”彼”は びくりとして 音のほうへ顔を向ける。

そしてそれがただの風が奏でる葉々の音だと気づくと
深い溜息をついた。



誰も恐れて入らないという”黒い森”。

うっそうとした樹木の間  ”彼”は佇んでいた。


佇んでいた、というには足りないほどに彼の体は大きく、がっしりとしており その存在は強い。


ただでさえ、その見に纏った甲冑は
この王国の兵士たる 深い茶橙の色のそれ。



その整えられた姿形と王家の紋章まで入った その甲冑からは
彼が 兵士としても 上位の人間である事を忍ばされる。



しかし、それも すでに彼のとっては 過去の栄光でしか なかった。

 なぜならば─────





(・・・・・俺は一体どうなるのだろうか・・・・・)





手に持った 両刀の斧を じっと見つめる。

一度は褒美として 王より授かったこの 双頭竜の斧。

それが今、───王の血の痕で塗れている・・・・・





(俺は・・・)




(なんてことを・・・・ しかし─── しかし── )


彼は 顔を両手で顔を覆った。







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いつもの ごとく。





王の城下来訪に 近衛兵として供をしていた折。

王の馬車の前に一人の子供が飛び出してきた。

逃げた猫をおっかけてきたらしい。

馬車は其のために 急停止をした。

子供を助けるためだ。
問題はない。


そう、ただ、それだけのことだった。

たった、それだけのことだったのだ。



だが。しかし。







『余の道をさえぎった者はお前か!!!!!』


まだ年端も行かぬ子供の前に立ちはだかり、彼・・"王”は叫んだ。

その目は血走り、据わり、相手を子供としてみていない様子。

既にその時には いつもの王とは どこかが違っていた。

何かが、おかしかった。





『無礼者が!わしの道を汚すか!』

絶叫にも似た悲痛な声で王が叫ぶ。



幼いその子供は わけがわからず 泣き始める。


顔を真っ赤にした王は腰の剣に手をかけ、それを抜き放った。



(止めなければ!)

  
敬愛してきた王のあるまじき行為にとっさに体が動く。



(──そう、ただ 王を止めるはずだった。)


(なのに・・・)



振り下ろされる王の刃に間に合わず その代わりに 斧の刃が王の背を貫いた。



さびた鉄のような匂いが鼻をついた。


その瞬間、自分がしでかしたことを認識する。


子供の瞳に移る血片と自分の姿が脳裏に焼きついている。



『王殺し!』

『王殺しだ!!』




今は聞こえない 過去の民の声が脳裏に反響する。
彼は耳を押さえ、うずくまった。



あのあと、周囲を押し切るように走り逃げてきた。


どのようにここまで逃げ切れたのかはもう自分でも定かではない。





(・・・・身寄りがなかったことだけが救いか・・・)



家族が。もし親類が居たのなら。
王殺しの血縁として全ての血縁が根絶やしにされていたことだろう。
しかし彼は 孤児であった。身寄りなく 一人で王国兵士に志願したのだった。




(── これから 一体 どうしようか)



それにしても。


国民に愛されてきた王の 突然の変貌は一体何だったのだろうか。

そういえば。



──あの側近がついてから・・・王の言動がおかしくなってきた・・・




彼の脳裏に 黒衣の男の姿が呼び起こされる。
 有能そうであるがどこか人を寄せ付けないそのまなざし・・・・




(・・・もしかして・・・・・ いや、そんなことあるまい・・・・。

自分のした大罪を人になすりつけるつもりか・・・!俺も堕ちたものだ・・・。)


うう、と彼は呻くと 自分の頭を両手で抱えた。




 「・・・・これこれ、それほど思いつめるでない・・・・・。

 お前さんが思っているようなことが 起こったのかもしれませんぞ。」



突然の 言葉にびっくりし、急いで
顔をあげると 彼の目の前に一人の老人が佇んでいた。



その気がなくても 双頭の竜をつかむ手に力が篭る。



「これこれ。物騒なものをもちださんでくれ。
お前さんを貶めるために来た訳では ないんじゃがの。」



濃い紫の長衣を身にまとい、長い白髪と髭を赤い日の光りに染めながら
その老人は ここに居ることが全く自然であるかのように 立っている。
その姿はまるで年齢を重ねた 聖樹のようだ。



「・・・お前さんが”双頭の竜の使い手”として名高い兵士 ”デュアル・モナーク”じゃな。」


緊張のために”彼”の手がじんわりと汗ばむ。
この老人は一体どこまで自分のことを知っているのだろうか。
いや、もうこのことは周知の事なのだろう。



「・・・・今や・・・ 俺は 王を殺した大罪人だ。」




「・・・お前さんは 狂った王の愚行を止めたんじゃろ?」



「!」


自分でも忘れていた自分の行動の大元を言い当てられ、
不意に胸に熱いものがこみ上げてきた。



「──・あ・・・・貴方は・・・?」



目頭が熱くなるのを押さえながら"彼”── ”双頭の竜の使い手”は言葉を絞り出した。



「ノア、という。人は賢人ノア、と呼ぶようだが。」



「さぁ、お前さんを迎えに来たんじゃ。手伝って欲しい事がある。

──この世界に現れた”混沌”を排除する力として
お前さんが必要なのでな。」



老人の手が彼に差しのべられた。



葉々の隙間から差し込む光りに 老人の掌の上で細かい皺が
いくつもの細かな影を生み出していた。





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すみませんが この妄想の断片はアーリマン(4人目)までやりたいと・・・
自分で納得がいかないので・・・
妄想暴走中ですみません(汗