☆収穫祭☆
この時期、イシンシアでも収穫祭は行われます。
どのようなことをするのかというと、皆で取れた色んな食材を持ち合い、
それぞれの料理に舌鼓を打つのです。
また、教会では様々な収穫物がイシンシアの大地に向けて捧げられます。
さてさて、
お城の裏にある 『オットーの森』では、いつも大きな栗が採れます。
大体大きさは、人間の頭程。
実は、この『巨大栗』、イシンシアの特産物の一つなのです。
そして、毎年 それを取りに行くのは子供達の仕事。
それを職人さんの所へ持って行き、色々なお菓子や料理を作ってもらうのです。
勿論、王様のユアン君もまだまだ子供であるので、行かねばなりません。
○レイルズ登場○
ユアンは一人、大きな栗を抱えつつ拾い集めた栗の数を数えて高笑いをしていた。
ユアン:「ふっふっふっ。どんなもんだい・・この数!・・・・・
15個以上はあるよな!
今年もオットーの森へやってきたユアンとローズとイトシンの三人組。
今回はユアンの提唱で(というか強制)三人で栗拾い対決をしていたのだった。
「もうすぐ制限時間終了だし、俺の勝ちだなこりゃ。」
このようなことで ふくふくと顔を綻ばせるユアン少年だが、
そんなんでも この国の王様であることには間違いない。
?:「・・・・・滑稽だね。」
不意にどこからか嘲笑交じりの高い声が聞こえてきた。
ユアン:「?・・・・・・誰だ?」
ユアンが薄黄色の髪を揺らして、声のした方を向いた。
木陰の中、赤い衣装を身に付けた者の姿が見え隠れしている。
ユアン:「おい、出てこいよッ。」
?:「そう憤るなよ。」
そう言って木陰から出てきたのは一人の紺色の髪をもつ少年だった。
ユアンよりか少し年上だろうか。
?:「それにしても、一国の主たる王が、子供に混じって栗拾いとはね。
あまりにもくだらなすぎて笑えるな。」
ユアン:「なんだと?!」
?:「・・・・それにしても小さい王様だな。それにガキじゃないか。
こんなんでよく国が保たれるもんだ。」
現れた生意気な少年は値踏みするようにユアンを見ている。
ユアン:「てめっ(怒)!言わせておけば!!・・・・・みない顔じゃないか・・オマエ何者だ?」
?:「───俺はレイルズ。」
その名にふと、ユアンが首を傾げる。
ユアン:「・・・・・レイルズ?・・・どこかで聞いた名だな。」
イトシン:「おや・・・・?そこにいるのはレイルズ様ではないですか?」
突然 茂みからひょっこりと若き大臣の姿が二人の前に現れた。
頭や体のあちこちに落ち葉を身につけ、大きな栗をいくつか抱えている。
ユアン:「あ。イトシン。・・知ってんの、コイツ?」
レイルズ:「やぁ、イトシン大臣。お久しぶりだねぇ。」
イトシン:「お久し振りです、レイルズ様。────失礼ですよ、ユアン様。
この御方は、近隣の国”アーシュレイ”の王のご子息ですよ。」
ユアン:「アーシュレイ王・・?ああ、あのごっつい青ひげのおっちゃんか。そーいや、
こないだおっちゃんに会ったときに子供がいるってきーたな。」
レイルズ:「・・・・ふてぶてしい王だな。そう、俺はアーシュレイの王子だ。
もう少し近隣の国のことぐらい勉強しろよな、王様。」
相変わらず人を食ったような言い方にユアンが反撃をしようとするが、
その口をイトシンの手が塞ぐ。
イトシン:「それにしても、レイルズ様は本日はこちらには如何の故・・・。
・・・・・・・送迎の準備もなく、大変失礼を致しました。」
レイルズ:「ああ、収穫祭ってのを拝見させてもらおうと思ってね。
それにお忍びだから送迎なんかいらないよ。
第一連絡もしてないのだしね。」
イトシン:「・・・・お忍び、ですか。」
若き大臣は微笑みを返すが、明らかに苦笑といっていいだろう。
”何処も一緒だな”と言いたいのか、その黒い瞳がちろりとイシンシア王に向けられる。
レイルズ:「まぁ、すぐ帰るから気にしないでくれたまえ。
今日はユアン王に会えて嬉しかったよ。」
アーシュレイの王子が右手を上げて軽く暇の挨拶をしようとした時
突然甲高い声が響いた。
ローズ:「ユアンッ!とってきたわよッ栗ッ!!12個もよ!
きっと私の勝ちねーっ」
「「「!」」」
びっくりする3人の前に今度は薄桃色の髪の少女が現れた。
ずるずると栗を入れた”ソリ”を引きずっている。
そんな彼女に6つの瞳がむけられた。
ローズ:「どしたのよ??・・・・あら?どなた?」
ローズが首をかしげてレイルズを見た。
レイルズと言えば、なぜか顔を紅潮させてローズを直視している。
ユアン:「あーこいつ?アーシュレイのさー・・
ユアンが面倒くさそうに近隣の王子の紹介をしようとすると、
その王子は自ら進んでローズの前で膝まづいた。
レイルズ:「初めまして、お美しいお嬢さん。私はアーシュレイ国の第一王子レイルズ。
宜しければ是非御名をお教え下さい。」
ローズ:「・・ろ、ローズだけど・・・。」
レイルズ:「ローズ!これはまたなんとも美しい名前だ。宜しければこの私と
アーシュレイの国へ赴いては下さいませんか!そして将来、我が妻に!!
ローズ:「・・は・・はぁ?」
ユアン:「・・おいっ・・・レイルズ!!」
イトシン:「・・・レ、レイルズ様・・・?」
レイルズ:「ええ、勿論すぐにとは申しません!いつでもお迎えに参ります!」
アーシュレイ王子は、さっとローズの手をとるとその甲に軽く接吻をし、
マントを大げさにはためかせて立ち上がった。
ローズ:「まぁッv」
ユアン:「(怒)!」
イトシン「(汗)!」
レイルズ:「今日はこれにて失礼しますが、またお会いしましょう、ローズ嬢。
ユアン王よ、再び邪魔にくるので宜しく頼むぞ。」
ユアン:「・・に・・・二度とくるなーっ」
ユアンはそのたかビーな後ろ姿に怒りの声を上げる。
ローズ:「・・・・あら、ユアンってばヤキモチ?」
ユアン:「ばッばかやろ。そんなわけー・・」
イトシン:「・・・・・見世物になっているので、その続きはまた後でにして下さい・・。」
何時の間にか3人の周りでは子供のギャラリーが輪を作っていた。
<了>
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